疲れない創造習慣

イラストレーターのための、クライアントワークの合間を縫って自主制作を続ける疲れない習慣

Tags: 自主制作, クライアントワーク, フリーランス, 習慣, モチベーション維持

はじめに

フリーランスのイラストレーターにとって、クライアントからの依頼に応えることは重要な業務です。しかし、納期や修正対応に追われる日々の中で、本来情熱を傾けたいはずの自主制作がおろそかになってしまう、あるいは疲れてしまって自主制作に手が回らないという状況に陥ることは少なくありません。自主制作は、自身の表現力を深め、新しい技術を試み、創造的なエネルギーを維持するために不可欠な活動です。クライアントワークとの両立は容易ではありませんが、疲弊することなくこの二つをバランスさせるための習慣や考え方が存在します。

本記事では、クライアントワークの合間を縫って自主制作を継続するための具体的な習慣と、そのための心の持ち方について考察します。

なぜクライアントワークの合間に自主制作が難しいのか

多くのイラストレーターが、クライアントワークの合間に自主制作を行うことの難しさを感じています。その背景にはいくつかの要因が考えられます。

これらの要因に対処し、疲弊することなく自主制作を続けるためには、意識的な習慣づくりが重要になります。

クライアントワークの合間に自主制作を続けるための習慣

1. マイクロタスク化と細切れ時間の活用

まとまった時間を確保することが難しい場合、自主制作を細分化し、短時間で取り組めるマイクロタスクに分解します。例えば、「キャラクターのラフスケッチを5分だけ描く」「配色のアイデアを3つ考える」「資料画像を10枚集める」など、具体的な行動に落とし込みます。

クライアントワークの休憩時間や、作業と作業の間の数分間、あるいは通勤時間などを活用し、これらのマイクロタスクを少しずつ消化していきます。この習慣により、たとえ短時間でも毎日自主制作に触れる機会を持つことが可能になります。

2. 自主制作の「目的」を明確にする

なぜその自主制作を行うのか、その目的を明確にすることも有効です。技術向上、新しい表現の探求、純粋な趣味、ポートフォリオ拡充など、目的がはっきりしていると、取り組むモチベーションが維持しやすくなります。クライアントワークとは異なる「遊び」や「実験」の場として位置づけることで、精神的なプレッシャーを軽減できます。

目的が明確であれば、取り組むべきマイクロタスクも設定しやすくなります。

3. 実行のハードルを下げる環境整備

自主制作にすぐ取り掛かれる環境を整えます。スケッチブックとペンを常に手の届く場所に置く、自主制作用のファイルやソフトウェアをすぐに開けるように準備しておくなど、物理的なハードルを下げることで、「さあ、やるぞ」という気合いが必要なくなり、自然と取り組むことができます。

特に、デジタルツールを使用する場合、起動に時間がかかったり、ファイルを探したりする手間があると、短時間での取り組みが億劫になりがちです。ツールやファイルをすぐに開けるショートカットなどを活用するのも良いでしょう。

4. 「完璧」を目指さない姿勢

自主制作だからといって、必ずしも一つの作品として完成させる必要はありません。アイデア出し、ラフスケッチ、特定の技術の練習など、プロセスそのものを楽しむ姿勢が重要です。完成しなかったとしても、その過程で得られた学びや発見は、今後のクライアントワークや別の自主制作に必ず活かされます。

「少しでも進めばOK」という考え方は、精神的な負担を減らし、継続を容易にします。

5. 小さな進捗を「見える化」する

マイクロタスクや短時間の取り組みで生まれた小さな進捗を記録したり、目に見える形にしたりします。スケッチを集めたノートを見返す、データ化したものをフォルダにまとめるなど、自分が着実に進んでいることを認識することで、モチベーションの維持に繋がります。

SNSで進捗を限定的に公開するなど、他者からの反応を得ることも、モチベーション維持の一つの手段となり得ますが、他者の評価に過度に依存しないよう注意が必要です。あくまで自分のための「見える化」を主軸とすることが望ましいでしょう。

実践のヒント

まとめ

クライアントワークに追われる日々の中で自主制作を続けることは、多くのイラストレーターにとって挑戦的な課題です。しかし、自主制作を細分化して短時間で取り組む、目的を明確にする、環境を整える、完璧を目指さない、小さな進捗を記録するなど、具体的な習慣や考え方を取り入れることで、疲弊することなく創造活動を継続することが可能になります。

自主制作は、自身のイラストレーターとしての幅を広げ、長期的なキャリアを豊かなものにするための大切な時間です。無理なく、楽しみながら続けるための「疲れない習慣」を、ぜひ日々の生活に取り入れてみてください。